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コラム

人事制度構築コンサルティング

【2011.11.8】

厚生年金の標準報酬月額、上限引き上げ検討について

厚生労働省は、厚生年金保険について、保険料の算定基準となる標準報酬月額の上限を引き上げる方向で検討に入りました。

厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率(一般の被保険者は16.412%)を掛けて算出されます。厚生年金保険の標準報酬月額の現在の上限は62万円で、保険料は101,754円。これを事業主と会社が折半していますので、それぞれ約59,000円の保険料を支払っている形となっています。

今回の検討では、厚生年金保険の標準報酬月額を、健康保険の標準報酬月額の上限と同じ121万円とする案が有力とのことです。

そうなった場合、保険料は約198,600円、折半額が約99,300円となります。給料が62万円以上の人は最大で月4万円の負担増になります。また、被保険者本人だけでなく会社の負担も同額増えます。

現在の厚生年金の計算方法では、厚生年金保険料の支払いが増えれば老齢年金の額も増えるということになります。

しかし、今回は、徴収する保険料は引き上げても老齢年金は抑制するという方向で検討されるようです。これは、厚生年金給付の計算の根幹である報酬比例という考え方に矛盾するものであり、被保険者の反発は免れられません。

高収入の人や企業は負担が増えてもやむを得ないという考え方もありますが、そうであれば、社会保険という形ではなく、税金を財源とする社会保障に移行すべきだと思います。

すでに、国民共通である国民年金の給付の2分の1は国庫負担、つまり税金が投入されています。また、厚生年金保険から国民年金に回す拠出金についても、被保険者から集めた保険料からは2分の1で、残り2分の1は国庫負担となっています。

もはや保険という形では年金制度が成り立たないにもかかわらず、雑巾を絞るようにして何とか保険料を徴収し、わずかの期間だけでも体裁を整えようとしている状態です。

以前にも書きましたが、年金は国民年金に一本化し、税方式に変更して全国民から広く薄く徴収するしか、抜本的な解決はできないのではないかと思います。

 

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年11月1日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.11.8】

厚生年金の支給年齢引き上げよりも踏み込んだ年金制度改革が必要

厚生労働省が、厚生年金の支給開始年齢の引き上げ等について議論をスタートしました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001r5uy.html

現行の厚生年金(2階部分)の支給開始年齢は、段階的に65歳まで引き上げることとなっており、男性で1953年生まれの者から、女性で1958年生まれの者から61歳となります。

これに対し、今回提示された支給開始年齢の見直し案では、68歳までの引き上げを念頭に次の3パターンが示されています。

(1)厚生年金の引き上げスケジュールを現行の「3年に1歳ずつ」から「2年に1歳ずつ」に前倒しする

(2)厚生年金について、現在の65歳への引き上げスケジュールの後、さらに同じペースで68歳まで引き上げ。併せて基礎年金についても68歳まで引き上げる

(3)(1)で前倒しを行ったうえで、さらに同じペースで68歳まで引き上げる

ニュース等では、「年金を払うのが馬鹿らしくなる」と大反対の声が多いのですが、公的年金制度のことを、自分が将来受給するために保険料を積み立てているのだと誤解をされている方が多いためではないかと思います。

公的年金は世代間扶養、つまり、自分の親に仕送りをするのと同じで、現役世代はリタイア世代の見知らぬ誰かに「保険料」という仕送りをしているということです。

だから、保険料を納めることと、自分が年金をもらうことは切り離して考えるべきなのです。

現役世代が支払う保険料は、自分が将来年金を受給するために積み立てているのではなく、自分達を育ててくれたリタイア世代に対する仕送りだと考えれば、気持ちよく保険料を納められると思います。

一方で、自分達が将来年金を受給する際には、その頃の現役世代に「保険料」という仕送りをしてもらうことになります。そこで考えるべきなのは、少子高齢化の影響でおそらく少なくなっているはずの現役世代に、できるだけ負担をかけないようにするということです。

そう考えると、公的年金制度の支給年齢引き上げは、当然やらなければならないことだと思います。

むしろ、支給開始を68歳に引き上げるくらいでは、全然足りないと思います。

なぜなら、その頃にはさらに平均寿命が上がってリタイア世代(年金受給世代)の割合が今と同じように高くなり、現役世代の負担の重さが問題となることが予想されるからです。

できれば、

(1)老齢年金自体を廃止。生活保障については、現在の生活保護制度の拡充により対応(将来リタイアしたい人は現役時代から民間の積立型個人年金等に加入)

(2)公的年金制度(障害年金、遺族年金のみ)を国民年金に一本化

(3)年金制度を保険方式から税方式(消費税などの間接税として徴収)に変更し、財源を確実に徴収

くらい踏み込んだ改革に向けた議論を進めてほしいくらいです。

同時に、規制緩和と法人税率軽減(引き替えに所得税率や消費税率アップ)による国内でのビジネス機会の創出とそれによる労働ニーズの拡大、定年年齢の規制撤廃も必須です。

以前にも書きましたが、「健康な人はいつまでも生き生きと働くことができ、様々な理由で働けなくなった場合は生活の保障が確保されている社会」が将来の日本の理想像だと考えています。

 

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年10月15日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.10.24】

マクドナルドの定年制度復活は残念

先日、マクドナルドが、過去に廃止した定年制度を再び復活させるということを発表しました。定年制の復活と同時に65歳までの再雇用制度を導入し、雇用継続を希望する社員の健康や能力を判断して年間契約で雇用するとのことです。

つまり、多くの企業と同じ仕組みに「逆戻り」するということになります。

定年制の廃止によって、経験豊かなベテラン社員が自身の成果をあげることを優先してしまい、若手社員の育成が疎かになってしまったので、定年制度を復活させ、人を育てていく企業文化を再度築き上げるということです。

このニュースを見て、私は非常に残念でした。私は日本の企業から定年制度がなくなればいいと考えていますが、それがいかに難しいかを知ったからです。

マクドナルドが発表した定年制度復活の理由は、あくまで建前だと思います。
ベテラン社員が若手社員を育成する企業文化を築き上げたいなら、定年制度を復活させなくても、ベテラン社員の人事評価項目に人材育成の観点を盛り込めばよいからです。

定年制度復活の本当の理由は、日本の場合、定年制度があった方が人件費を削減できるからだと思います。

定年制度を廃止すると、60歳を過ぎた段階で一律大幅に給料を下げることは困難です。しかし、定年制度があれば、60歳以降は年契約の嘱託社員として再雇用すれば、大幅に給料を減らすことができます。それが可能なのは、雇用保険に高年齢雇用継続給付基本給付金という仕組みがあるからです。

高年齢雇用継続給付基本給付金とは、60歳以上65歳以下の賃金月額が、60歳到達時の賃金月額の75%未満に低下した場合について、最大で賃金月額の15%相当額が支給されるという制度です。

企業側からすると、60歳以上の社員の給料を雇用保険が一部肩代わりしてくれるということなので、非常にありがたい仕組みです。一方、60歳以上の社員にとっても、雇用保険がある程度補填してくれるので、嘱託社員で給料が下がったとしても、まあいいだろうということになります。

こうして、企業側、社員側ともに、定年制度があった方がメリットを享受できることになります。マクドナルドは定年制度を復活させることで、再びこのメリットを享受する方が、経営的に望ましいと判断したのだろうと思います。

高年齢雇用継続給付金の趣旨は、「給付金を出すから、企業は60歳以降も継続して雇用できるようにして下さいね」ということですが、一方で「60歳以降も正社員としてそれまでと変わらずに雇用するよりも、いったん退職させて嘱託社員として雇用した方が経営的なメリットがある」という状態になってしまっ ているのです。

最近は、少子高齢化に対応するためには、女性や高年齢者が活躍できる場を増やす必要があると叫ばれていますが、この高年齢雇用継続給付金が、それを阻害する要因の1つになっていると思います。

私は、自営業者と同じく企業等に雇用される人も、いつ仕事を引退するかは自分が決められるようになるのが理想だと思います。働くことは人生の生きがいの1つでもあるからです。その機会を60歳や65歳という年齢で一律に奪ってしまう定年制度は、なくした方がいいと考えています。

ところが、国の制度自体が定年制を前提に作られているという現状を、今回のマクドナルドの定年制復活というニュースであらためて実感しました。

マクドナルドは、将来的に定年制の廃止を目指していることには変わりがないということなので、その日を待ちたいと思います。

 

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年10月1日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.10.04】

メンタルヘルス不調者が出たらどう対応するか

近年、メンタルヘルスの問題が増加しています。

労働安全衛生基本調査(厚生労働省)によると、メンタルヘルス上の理由により連続1か月以上休業した労働者がいる事業所の割合は、平成17年度2.6%、平成22年度5.9%と上昇しています。

 

メンタルヘルスの問題が発生するのを防ぐためには、日頃からメンタルヘルスケアに取り組むことが必要です。ただし、そうした取り組みを行っていても、ある日突然、メンタルヘルス不調者が出る可能性は、どの企業にもあります。

 

大企業なら、長期的な休職で治療に専念させたり、配置転換等で業務負担の軽い職務に変更したりすることが可能かもしれませんが、中小企業ではそのような対応は困難です。

 

今回は、中小企業でメンタルヘルス不調者が出た場合の対応について、書きたいと思います。

 

基本的な流れとしては、まず休職してもらい、休職期間終了時に治癒すれば復職、治癒しなければ退職、ということになります。

 

ただし、スムーズに進まないケースが多くあります。具体的には以下のような形です。

 

1.本人が休職しようとしない。

2.休職が長期に及んで復職できない。

3.復職後も無断欠勤をするなど、業務に支障をきたす。

4.以前のように働くことができない状態だが、退職も拒む。

 

このときに無理やり休職や退職をさせようとすると、問題が余計にこじれてしまいます。

 

こうした事態に陥らないようにするためには、まず就業規則にメンタルヘルス不調者が出た場合を想定した以下の条項を記載しておかなければなりません。

 

1.休職に関する事項(特に休職の最大期間と、休職期間の通算のルール。中小企業では休職期間

  は長くても6ヶ月が妥当)

2.休職期間中の賃金に関する事項(休職中は無給。社会保険料本人負担分は、会社に振込んでも

  らう)

3.解雇に関する事項(解雇事由の1つに、精神に支障があって業務に耐えられないと認められたとき

  を記載)

 

以上の就業規則を前提として、以下のように進めます。進めるうえで、以下のポイントを念頭に置いて下さい。

 

1.本人への叱責は厳禁。本人の人格を尊重していることを常に表すことが重要。ただし、会社として

  は規則に従って対応せざるを得ないことを伝える。

2.必ず医師の診断を受けさせる。

3.解決までに時間を要することを覚悟し、じっくり取り組む。

 

 

では、実際に手順を示します。

 

1.現在の状態では、就業規則の解雇事由に該当すると判断せざるを得ないことを伝える。

 

2.ただし、解雇は避けたいので、医者による治療を受け、完全に治るまで休職してはどうかと勧める。

  休職期間は休職を取れる最長限度が望ましい。

  勤続1年以上経っている場合は、休職中、傷病手当金が申請できるので、現在の給与の3分の2は

  出ることを伝え、生活面の不安を取り除く。

 

(1)上記説明で休職を受け入れた場合

 

以下のことを伝える。

 

ア)休職期間が終わっても治癒せず、復帰できなかったり、復帰しても就業困難に陥った場合は、就業

  規則上、どうしても退職してもらわざるを得ないこと

イ)治癒せずに復帰できず、退職になった場合は、退職後も傷病手当金を受給することが可能なこと

  (在籍中も含めて最大で1年6ヶ月分受給可能)

ウ)休職中の社会保険料本人負担分は、毎月会社宛に振り込んでもらう必要があること

エ)傷病手当金の申請のために、毎月、医師の診断書を提出してもらう必要があること

 

(2)上記説明で休職を拒んだ場合

 

自主退職を勧める。その際に、以下のことを伝える。

 

ア)病気による退職扱いとするので、治癒後、休職することになったときには、通常の自己都合退職と

  異なり、雇用保険の失業等給付の給付制限3ヶ月なしで失業手当を受給できる。

イ)3日以上会社を休ませ、傷病手当金の申請をする(ご本人の勤続期間が1年以上の場合)。退職後

  も、最大で1年6ヶ月分は受給可能である旨を伝え、生活面の不安を取り除く。

 

(3)休職も自主退職も拒み、あくまで働くという場合

 

再び就業困難に陥った場合は、就業規則上、どうしても退職してもらわざるを得ないことを伝え、通常通り働いてもらう。この場合は、勤務中の本人の動向を常に把握する必要がある。業務に支障が生じたら、やはり勤務は無理であることを説得し、規則上どうしても退職してもらわざるを得ないということを伝え、退職してもらう。

 

以上の流れで、休職させれば、その後の復職または退職の手続きがスムーズになります。きちんと医師にかかって、治療すれば、復帰後元通り業務が遂行できるケースも多いです。あくまで本人を最大限尊重して、対応することが大切だと思います。

 

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年9月15日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.9.22】

責任の重さと賃金を連動させるために役職手当の活用を

私が今までお話を伺った社長の多くは、各社員の責任の重さと賃金を連動させたいとおっしゃっています。実際に、見込みのある社員をどんどん部門の責任者に登用し、給与も一気に上げるというケースも多いです。

年功主義的な要素が多く残る会社において、社員が不満を抱く大きな要因は、ポストが上がって責任が増えても、給与がほとんど変わらないということですから、そのように責任が増えたら一気に給与も上がるというのは、やる気がある若手社員のモチベーションを高く保つのに重要な要素の1つです。

ただし、問題もあります。

それは、期待通りに責任を果たせない場合です。そのような場合は、必然的にポストから外され、給与も下の水準近くに下げられることになります。

このとき、本人も自分の力不足を認識していれば、問題はありません。問題は、本人が一生懸命責任を果たしたと思っていても、上司がそう思っていない場合です。

給与を下げることについて、本人が納得せず、最悪の場合は労働条件の不利益変更ということで、労働基準監督署等に駆け込まれることになります。

こうした事態に陥るのを防ぐためには、まず人事制度をきちんと構築し、人事評価と賃金水準の決定ルールを明文化しておくことが必要です。

その際のポイントは、責任に応じて給与を一気に上げる際は、基本給自体を大きく上げるのではなく、役職手当を付けるという形で行うように制度設計をすることです。

役職手当の額は、ポストに付くことの責任を実感できるよう、例えば課長クラスでしたら、少なくとも5万円以上は必要です。

日本の場合、基本給自体を下げることは、うまくやらないと労使トラブルの原因になりやすいです。大きく上げるときは良くても、ダメだったら下げるということが難しいです。

そこで、責任と給与を連動させるためには、ポストから外れたら支給を止めることができる役職手当という形で行う方が良いのです。

当然、むやみにポストから外したりすれば、使用者の権利濫用ということで問題になりますが、そのポストに求められる責任を果たすことができないために別の社員が代わることに対し、ある程度合理的な理由があれば、ポストを外し、役職手当も外すことができます。

このような制度にしておけば、責任と給与水準を連動させることができます。

責任の重さと連動して給与が決まっていることが明確になれば、社員の間でも納得感が高まります。

あとは、ポストを外れることは退職勧奨ではなく、実力をつければ何度でもチャレンジできるという仕組みや風土づくりが重要です。一度ポストに就いて失敗したら退職するしかないとなると、誰もポストに就きたくなくなるからです。

実力とやる気がある社員がどんどんチャレンジできる一方で、失敗したら処遇も下がる。でも実力をつければ何度でもチャレンジできる仕組みや風土をつくることができたら、社内は活性化し、会社の発展へとつながるはずです。

そのために、役職手当を上手く活用してはいかがでしょうか。

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年9月1日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.9.12】

「顧客満足度の向上を図る」という目標設定はダメ

目標管理制度を導入していても、上手く運用できていない企業が多いのが現状です。うまく運用できていない原因の多くは、期首の目標設定の仕方に問題があります。

今回は、その中でも多い「目標が抽象的な表現になっているケース」をピックアップします。

目標管理制度で設定する目標は、「将来のある時点で、どのような状態になっているのか」を具体的に表すものでなければなりません。そのため、できるだけ数値化するのが望ましいわけです。

ところが、設定する目標が「顧客満足度の向上を図る」「業務効率化を推進する」などの抽象的な表現になりがちです。

このように抽象的な表現で目標を設定してしまうと、期末の人事評価の時点で適切に評価することができません。「顧客満足度が向上したかどうか」「業務が効率化したかどうか」を判断する基準が曖昧だからです。

多くの場合、被評価者は自己評価が高いので、「顧客満足度が向上した」「業務が効率化した」と思い込んでいる一方で、評価者は、会社や部門が求める水準には達していないという状況に陥りがちです。

そうなると、評価する方もされる方も、納得できる評価結果にはなりません。

結果として、目標管理制度は形式的に導入しているだけで、人事評価をする際はあくまで参考程度に留めて、最終的な評価は総合的な判断で決定するなどという運用になりがちです。それこそ、恣意的で透明性の低い運用になってしまいます。

目標管理制度をきちんと運用するためには、設定する目標を具体的な達成基準とともに表現するということが重要です。

以下に、目標設定の際に避けたほうがよい抽象的な表現の例を示します。

「効率化する」

「共有化する」

「明確化する」

「積極的に」

「迅速に」

「臨機応変に」

「極力」

「最大限」など

こうした表現を避け、できるだけ数値化することが重要です。数値化できない場合は、目標達成時の状況を詳しくイメージして、それを記述することです。

ただ、頭では分かってはいても、実際にやるとなると難しいものです。これには近道はなく、地道に練習を重ねるしかありません。

多くの大企業では、毎年目標設定研修を実施しています。研修で実際に目標を設定してみて、講師から指摘を受けることで、正しい目標設定の仕方に気付くようになります。

しかし、中小企業ではこうした研修を実施しているところは少ないのが現状です。

目標管理制度は、きちんと運用すれば人事評価の面だけでなく、経営面でも有用なものです。

正しい目標設定の仕方を社員の方が習得し、目標管理制度を運用できるようなお手伝いを今後も継続していきたいと考えています。

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年8月15日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.08.02】

社員のモチベーション向上には「成果」と「小さな組織」が大事

社員のモチベーションを上げるにはどうしたらいいか。

これは、どの企業でも抱えている課題です。

「賃金を上げる」
「福利厚生を充実させる」
「教育研修に力を入れる」など

企業では、さまざまな取り組みが行われています。いずれも、モチベーションを上げる方法として重要です。ただ、モチベーションには、個人毎のモチベーションと、組織内の個人全員が持つモチベーション (組織単位のモチベーション)があります。

上記の方法は、あくまで個人毎のモチベーションを高めるのに有効ですが、組織単位でモチベーションを上げるには、これだけでは不十分です。

組織単位でモチベーションを上げることと、チームワークを高めることは互いに関連します。組織単位でモチベーションを上げれば、高いチームワークを発揮でき、逆にチームワークを高めれば、組織単位でモチベーションを上げることができます。

では、組織単位でモチベーションを上げるにはどうしたらいいのか。

ヒントは、学園祭の屋台にあります。

学園祭にいくと、学生サークルがいろいろな屋台を出しています。同じようなたこ焼きを売っている店なのに、全員が活き活きとしている屋台もあれば、あまりやる気が感じられない屋台もあります。

組織単位でモチベーションが高い屋台の特徴は、「売れている」ということです。どの屋台でも、最初は全員が高いモチベーションでスタートします。しかし、売れないと次第にモチベーションが低下し、屋台に活気が無くなり、さらに売れなくなるという悪循環に陥ります。逆にどんどん売れると楽しくなり、モチベーションが上がって店に活気が生まれ、さらに売れるという良い循環になります。

つまり、組織単位のモチベーションを上げる条件の一つは、「成果を上げる」ということです。成果が上がらない組織に所属するメンバーのモチベーションは、長続きしません。そういった意味では、「成果を上げる」のは、組織単位のモチベーションを維持する前提条件と言えます。

そして、「成果を上げる」のは、経営者や管理者の立てる戦略次第で大きく左右されます。社員のモチベーション向上というと、賃金、福利厚生、教育研修などといった、社員個人に向けた対応策ばかりが注目されるのですが、実は「成果を上げる戦略」を経営者や管理者が立案できるかどうかが大きく影響しているのです。

さらに、もう1つ大きな条件があります。

それは、「自分の働きぶりが組織の成果に大きな影響を及ぼす」という意識を全員が持てる状況になっているということです。

複数の大学の学生が集まる大規模なインカレサークルの屋台では、何名かの学生が熱心に働いていて店自体は繁盛している一方で、最低限の自分の役割は果たしているけど積極的には関わっていない学生もいたりします。これでは、たとえ成果を上げていても、組織単位でモチベーションが高い状態とは言えず、一人当たりの生産性も低くなります。文化祭の屋台ならそれでもいいかもしれませんが、企業の場合は問題です(とはいえ、このような状態になっている企業も多いのですが)。

モチベーションは、「自分の働きぶりが組織の成果に大きな影響を及ぼす」と感じられるかどうかに左右されます。前述のインカレサークルの屋台は、一部の人しかそれを実感していないために、モチベーションの低い学生も出てきてしまうのです。

「自分の働きぶりが組織の成果に大きな影響を及ぼす」という意識を全員が持てない一番の原因は、組織が大きすぎるためです。

もし大人数のサークルで運営するなら、お酒やお菓子などたこ焼き以外の商品を扱うチームや、遠くまで売り歩くチームを編成するなど、組織を小さく分ける必要があります。(ちなみに、私が学生時代に所属していたテニス部では、毎年学園祭の時におでん屋「テニーズ」を出店しており、このやり方によって、全員が高いモチベーションで運営することに成功していました。)

つまり、組織単位のモチベーションを高く維持するためには、「自分の働きぶりが組織の成果に大きな影響を及ぼす」という意識を全員が持てる程度の小さな組織にすることが重要です。さらに、各組織にはどのような成果が求められているかを明確にしておく必要があります。これは、経営者がやるべき重要な

役割の1つです。

以上をまとめると、社員のモチベーションを向上させるためには、個々の社員に対する働きかけをする前に、経営者自身がまず次の2つを行う必要があるということになります。

1.成果を上げられる戦略を立案する

2.会社内の組織を、求める成果が明確な小さな組織に分ける

戦略立案や組織編成などは、すでに当たり前に行っていることだと思われるかもしれません。しかし、「成果を上げられる」戦略や「求める成果が明確な小さな」組織になっていない企業も多いのです。

社員のモチベーションが低いとお悩みの経営者の方は、まずこの2点を確認してみるとよいと思います。

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年7月16日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.08.02】

人事評価は絶対評価と相対評価のどちらにすべきか

人事評価の基準は、大きく絶対評価と相対評価の2つに分けられます。

絶対評価とは、他の社員と比較せず、あくまで被評価者の働きぶりのみを振り返って評価する方法で、相対評価とは他の社員と比較して被評価者の評価を決める方法です。

どちらで評価するかは企業によって様々です。最初から相対評価で、例えば5段階の一番上のS評価に該当する社員が全体の5%、A評価に該当する社員が20%、などと割合を決めておく企業もある一方で、直属の上長が行う1次評価は絶対評価で行った後、2次評価や3次評価の段階で部門間の甘辛を含めて相対評価で調整する企業もあります。

私は1次評価から最終評価まで一貫して絶対評価の方が良いと考えています。つまり、必ずしも評価結果が釣鐘型の分布を描く必要はなく、例えば5段階のうち上から2番目の評価を取った社員の人数が一番多くなっても構わないということです。

その理由は、相対評価よりも絶対評価の方が、各社員のモチベーション向上のためには適していると思うからです。

有名なモチベーション理論の1つである動機付け・衛生理論によると、仕事に関する人間の欲求には2つの種類があります。1つは、仕事の不満を予防する働きを持つ要因である「衛生要因」。もう1つは、より高い業績へと人々を動機付ける要因である「動機付け要因」です。賃金は「衛生要因」に該当します。

つまり、いくら賃金を高めても、単に仕事への不満を予防する効果しかなく、モチベーションを高めるためには「動機付け要因」を充実しなければならないということです。

「動機付け要因」の1つに、「達成を認められること」があります。そして、各社員が達成したことを認め、モチベーションを向上させることこそが人事評価の重要な目的なのです。

相対評価の場合は、仮に全社員が一丸となって頑張り、成果を挙げた場合、「あなたも頑張ったけど他の人も全員頑張ったんだから」という理屈で個々の社員は真ん中の評価点しかつかなくなってしまう可能性があります。これでは皆で頑張ろうというモチベーションは生まれません。むしろ、他の社員の失敗を望んだり、足を引っ張ったりする空気が蔓延しやすくなります。

ですから、全員が頑張って成果を挙げた場合は全員を認め、良い評価点をつけられる絶対評価の方が、各社員のモチベーションは向上できるのです。

それにも関わらず、相対評価にする企業が相当数存在している主な理由は、次の2つの誤解によるものだと私は考えています。

1つめは、高い評価の人と低い評価の人を必ず一定割合で存在させなければ賞与額や昇給額が大きくなり、人件費負担が過大になってしまうという誤解です。

本来、人件費については人事評価制度ではなく、賃金制度でコントロールすべきものです。賃金制度の中に総額人件費をコントロールする仕組みを用意しておけば、たとえ絶対評価の結果、高い評価の人が多くなったとしても、経営的に妥当な人件費負担に抑えることは可能なのです。ところが、人事評価制度と賃金制度の境界が不明確だと、人事評価を行う際に人件費負担も考慮しなければならず、相対評価にするしかなくなってしまうのです。

2つめは、高い評価の人と低い評価の人を必ず一定割合で存在させなければ真ん中の評価ばかりでメリハリがつかず、頑張った人が報われないという誤解です。

きちんと評価した結果として、真ん中に寄るのであれば何の問題もなく、無理に上下にばらつかせる必要はありません。問題となるのは、評価者のスキルが足りずに適正な評価ができない結果、真ん中に寄るケースです。これについては、評価者訓練を地道に行って評価者のスキルを上げていくしかありません。ところが、相対評価にすると、簡単にメリハリをつけることができ、あたかも適正に評価できているかのように見えるのです。

以上のように、各社員のモチベーション向上という視点で考えると、相対評価を採用すべき合理的な理由はありません。

総額人件費をコントロールする仕組みを用意して、人件費負担を適正に抑えられるようにすること。そして、評価者訓練を地道に行って評価者のスキルを上げ、絶対評価できちんと評価できるようにすること。

この2つに留意して、1次評価から最終評価まで絶対評価にし、達成したことはきちんと認めるようにすることが、各社員のモチベーション向上、ひいては企業の成長・発展につながっていくのだと思います。

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年8月1日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.07.04】

社員の仕事ぶりに見合った賃金を払うには等級制度の整備が必須

仕事ぶりに見合わず高い賃金を支払っている社員の賃金をどうやって下げればいいかとお悩みの社長は多いと思います。最近お会いした何人かの社長も、皆さんこの問題を感じていらっしゃいました。

仕事ぶりに対して高い賃金を支払うことの問題として、人件費負担が過大になってしまうということが挙げられますが、見落とせないのは、他の社員のモチベーションの低下につながるということです。

他の社員から見ると、「あの人は自分より仕事をしないのに、なぜ給料が高いのか」ということです。往々にして自己評価が甘いだけというケースも多いのですが、それにしてもこういう思いを抱く社員が多いと、社内の人間関係がギスギスしたりモチベーションが低下したりして、会社の業績にも影響を及ぼします。

本来は、社員一人ひとりに仕事ぶりに見合った賃金を支払い、納得してもらった上で仕事に取り組んでもらうのが望ましいわけです。そのようにしたいと、どの社長も考えています。

それにもかかわらず、仕事ぶりに見合わず高い賃金の社員が生まれてしまう理由は、ほとんどが次の3つのいずれかに該当します。

1.前職の水準を保証する高い賃金で中途社員を採用したが、期待はずれだった
2.毎年全社員を昇給させているので、勤続年数の長い社員の賃金が高くなった
3.何かの仕事で成果を上げたので賃金を一気に上げたが、その後はダメだった

一度上げた賃金、特に基本給を下げることは、労働条件の不利益変更ということで、当該社員の合意が得られなければ労使紛争につながってしまう可能性があります。その際、第三者にも説明できるような合理的な根拠がなければ、ほとんど会社側が負けてしまうことになります。

また、そこまで行かないにしても、社員の給与を下げることは、相当の労力を使わざるを得ません。

その結果、なかなか下げられずに、仕事ぶりより高い賃金を支払い続けることになってしまうのです。

この問題の根本的な原因を探ると、ほとんどは等級制度が不備であるためという結論にたどり着きます。

等級制度とは、社員の能力や仕事内容、役割に対する格付けです。その格付けによって、基本給の水準を決定することになります。例えば、等級を6つに分け、下から2番目の等級は「ルーティンワークを確実に遂行するだけでなく、イレギュラーな業務についても自立的に対応する」という役割を担い、「基本給は20万円から25万円の範囲」というふうに、それぞれの等級にはどのような社員が該当するのかを定義するのです。

等級制度をきちんと定めると、各社員の賃金額に対する基準が明確になります。
そうすると、仕事ぶりと賃金が見合っているかどうかが判断できるようになります。

前述の例で考えると、例えばルーティンワークをこなすだけで、イレギュラーな業務には全く対応できない人が25万円の賃金をもらっている場合は、

「仕事ぶりに見合っていないから賃金を下げる」

あるいは、

「25万円の賃金に見合うようにイレギュラーな業務にも対応できるようになる」

という形で、仕事ぶりと賃金のすり合わせができるようになるのです。

また、仮に賃金を下げることになっても、その根拠が明確なので当該社員を説得する労力がかなり軽減されます。

そして、仕事ぶりと賃金が見合っているかどうかの判断を、人事評価という形で行うのです。

たまに、人事評価自体は実施していても、その基準となる等級制度を定めていなかったり、定めていても人事評価と結びつかずに形骸化してしまっていたりする企業がありますが、それでは地盤を固めていない土地にビルを建てるようなもので、いずれ運用が回らなくなります。

社員一人ひとりに仕事ぶりに見合った賃金を支払うこと、そしてその基準が明確になっていることは、社員のモチベーションアップにつながります。

そして、社員が高いモチベーションをもって仕事に取り組むことは、会社の業績向上にもつながります。そのための地盤固めとして、まずは等級制度を整備するというところから始めてみませんか?

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年7月1日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.06.21】

国民年金の保険料を納付した方が安心して暮らせる本当の理由とは?

国民年金の納付率が低下しています。2010年4月〜2011年2月の11ヶ月間実績は過去最低の58.7%になってしまいました。

「どうせ保険料をきちんと払っても将来年金をもらえるとは限らないから」
「生活難で現在のお金に困っているので、将来の年金に回す余裕などない」
というのが年金保険料を納付しない理由として挙げられる主な内容です。

内閣府の「消費動向調査」によると単身世帯・外国人世帯を除く一般世帯の2011年3月末の携帯電話普及率は92.9%ですから、生活難を理由に国民年金の保険料は納付していない世帯でも、携帯電話の料金は払っているというケースが多いと考えられます。

つまり、この背景にあるのは年金に対する不信感です。将来もらえるかどうか分からない年金に対して、貴重なお金を払う気はないということです。

確かに、一定年齢から受給できる「老齢」年金として、現在は65歳から老齢基礎年金が支給されていますが、いずれは受給開始年齢が70歳や75歳に引き上げられることが予想されます。その意味では、将来年金がきちんともらえるかどうか分からないから保険料を払いたくないという気持ちは理解できます。

しかし、国民年金の給付には、老齢基礎年金だけでなく、病気や怪我のために重い障害を負ってしまったときに支給される障害基礎年金や、夫が無くなった時に妻子に対して支給される遺族基礎年金もあります。

私は、老齢基礎年金については、思い切って民間の保険会社に任せてしまって、将来リタイアして年金を受給したいと思っている人だけが任意で加入する仕組みにする方がいいと思っています。誰でも必ず同じ早さで平等に年をとるので、老後の生活については自分で計画が立てられるものだからです。

しかし、障害を負ってしまったり、夫が亡くなってしまったりという不測の事態が発生してしまったときの生活は、国が責任を持って全国民に保障すべきだと思います。

「ライフプランは原則的に一人ひとりの自己責任で組み立てる。ただし、不測の事態で生活が困難になってしまったときは、国が救済する仕組み」

これが、日本の社会保障制度のあり方だと思っています。そういった意味では、現行の年金制度のうち、障害基礎年金や遺族基礎年金こそが、私達が安心して暮らすために欠かせない仕組みだと思います。

ただ、これらの年金は、本来の保険加入期間の3分の1以上保険料を滞納していたり、直近1年間の保険料を滞納していたりする場合には支給されません。

必ずしも保険料滞納だけが原因ではないのですが、本来年金が受給できるほど重い障害を負っているにもかかわらず、年金の受給資格がない「無年金障害者」は、12万人もいると言われています。

万一障害を負ったときに最低限の社会保障すら受けられない「無年金障害者」になってしまう可能性があるということを考えれば、たとえ老齢基礎年金の支給開始年齢が将来引き上げられる可能性が高いとしても、国民年金保険料をきちんと納付した方が安心だと思います。

そうした悲劇を生まないために、できるだけ多くの人に年金制度大切さを伝え、年金保険料をきちんと納めようという気になってもらうことは、社会保険労務士の重要な役割の1つだと思って日々活動しています。

あわせて、破綻寸前で早急な改革が必要な「老齢」年金について、どのような形が望ましいかを皆で考える機会を作っていければと思います。

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年6月15日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2011.06.03】

一定年齢になれば受給できる老齢年金は本当に必要か

日本人の平均寿命は約40年で10歳上がりました。

1970年 男性69.31歳 女性74.66歳
2009年 男性79.59歳 女性86.44歳

長生きできるようになったということは、素晴らしいことです。一方で、このままでは年金制度が崩壊するということが言われています。その主な原因として、少子高齢化が進み、少ない現役世代では多くの年金受給世代を支えること ができなくなることが挙げられています。

具体的には、20歳以上65歳未満の人口に対する65歳以上の人口は、1970年には11.7%だったのに、2009年には38.5%となりました。いわゆる現役世代2.6人で年金受給世代1人を支えるという計算です。
さらに、2030年には現役世代1.7人で年金受給世代1人を支えることになります。

このように、現役世代の負担が増加していくことが、少子高齢化社会の問題の1つだとされているわけです。

少子高齢化の要因は、出生率が低下したことと、平均寿命が伸びたことの2つです。出生率の低下に歯止めをかけることは可能だと思いますが、上げるのは非常に難しいと思います。平均寿命もまだまだ伸びるでしょうから、少子高齢化の流れは今後も進むでしょう。

そう考えると、年金制度は変更せざるを得ません。どういうふうに変更すればいいかは、私達がどのような社会を望んでいるかによって変わります。

今の年金制度は、「65歳で引退して、年金暮らしで余生を送る社会」を前提としています。もし、私達が今後もそのような社会を望むのであれば、65歳より若い現役世代の負担を増やす以外にありません。

「65歳だとまだまだ元気だから、受給開始年齢を70歳くらいに引き上げればいいのではないか」というのも、根本的な解決にはなりません。数十年後は、今よりさらに平均寿命が伸びるのは間違いないのだから、結局今と同じ議論になるのが明らかです。

私は、そもそも老齢年金自体をなくしてしまった方がいいと考えています。

現在の公的年金制度では、年金を受給するのは、老齢、障害、死亡の際です。このうち、老齢の部分、つまり、たとえ健康でも一定年齢に達したら年金受給権を得るという仕組みををなくしてしまうのです。

もちろん、病気その他の理由で働くことができない方については、現行と同様に年金を支給し、生活を保障する仕組みは必要不可欠です。

このことは、「一定の年齢が来たら引退して、年金暮らしで余生を送る社会」から、「働けるうちは働いて、生涯現役生活を送る社会」へと大きく転換することを表します。

「いや、自分は年をとったら働かずに、悠々自適の生活を送りたい」という人もいるでしょう。それも素晴らしい考えだと思います。

ただ、いつまで働き続けるのかはあくまで個人の考え方に委ねればいいことで、国が画一的に決めることはないと思うのです。年をとったら引退したいと思うなら、個人で年金に加入したりして、備えればいいのです。公的年金制度から老齢部分をなくすことができれば保険料は下げられるはずですから、その分を個人年金に回せば十分可能です。

画一的に一定の年齢が来たら引退することを前提とする社会が望ましいのか、元気で働けるうちは、生涯働き続けることを前提とする社会が望ましいのか。

これは、若い世代が考えないといけない問題です。自分達が老後を迎えたときに、どのような社会になっているのがいいと思うかです。

「まだまだ先のことだからよく分からない」
「官僚や政治家に任せておけばいい」

というわけにはいかないのです。なぜなら、それは自分達に直接関係する問題だから。数十年後に文句を言っても手遅れなのです。

年金制度は複雑で、制度を変えるには移行措置も十分検討しなければなりません。抜本的な年金制度改革ができないのは、現役世代や受給世代など、立場によって対立する利害関係が存在するためです。少なくとも、今までずっと保険料を払ってきて、もうすぐ年金をもらえる人にとっては、現行制度のままの方が望ましいのです。

そのため、仮に年金制度を改革しても、それが適用できるのは、早くても20年か30年先、つまり、今の30代や40代が老後を迎えた時なのです。

だから、私達30代や40代は、将来の年金制度をどうしていくべきか、自分達に関係があることとして、しっかりと考えてみる必要があると思います。

「一定の年齢が来たら引退して、年金暮らしで余生を送る。その代わり、現役時代は高い年金保険料を支払う『高福祉・高負担社会』」
「現役時代にはそれほど高い保険料を支払わなくてよい。その代わり、働けるうちは働いて、生涯現役生活を送る『低福祉・低負担社会』」

貴方は、どちらがいいと思いますか?

社会保険労務士事務所トリプルウィン
代表 樋野 昌法

(当社メルマガ2011年6月1日号コラム「士業のココロ」より転載)


【2009.10.15】

「中小企業向けに助成金を活用した社員研修サービスを開始」

10月20日から、キャリア形成促進助成金の申請代行と社員研修のパックサービスを開始します。

 中小企業庁「人材マネジメントに関する実態調査」(2008年11月)では、従業員規模の大きな企業に比べ、従業員規模の小さな企業においては民間教育機関を利用したOff-JTを実施する割合が低い(301人以上の企業では16.4%、20名以下の企業では7.1%)ことが指摘されています。また、従業員の教育・訓練の実施に当たって直面している課題として、教育・訓練等に充てる費用や時間が捻出できないことを挙げる企業が最も多くなっています(20名以下の企業では42.7%)。

 当サービスは、そのような「社員研修をしたいけど予算がない」という中小企業向けに、最大で研修費用の80%の助成を受けられるキャリア形成促進助成金を利用して、継続的・体系的に人材育成ができる仕組みづくりをサポートするものです。単なる助成金の申請書作成代行ではなく、経営理念や事業内容から会社に求められる人材像を明らかにしたうえで、実際に育成していくための能力開発計画を立案していきます。

 さらに、計画立案時に把握できる会社の現状を踏まえ、最も優先度の高い内容の社員研修を合わせて実施することで、助成金を受給しながら人材育成を行う仕組みをいち早く利用できるようにします。

詳細はこちら

【2009.03.01】

月刊「企業診断」(同友館)3月号に執筆しました

月刊「企業診断」(同友館)3月号の特集記事を執筆しました。

今回の特集は、企画段階から関わっています。特集タイトルは、「たかが研修、されど研修 〜研修する側・受ける側・それぞれのホンネ〜」です。今回の特集の企画を中の総論部分「企業研修のいまとこれから」、座談会「研修を成功させる方法」を執筆しました。

私が今回この特集を企画したのは、不況期の今こそ「意義のある」企業研修が求められていると思ったからです。
企業にとって、いつの時代でも人材育成は非常に重要な課題です。そのため、多くの企業で、人材育成の1つの手段として研修を実施しています。
一方で、研修を実施しても短期的な効果が見えづらいなどの理由で、不況期には研修に対する予算が一番先に削られる場合も少なくありません。また、そもそも研修自体の効果に疑問を持つ経営者もいらっしゃいます。 しかし、私は研修という手段自体は、企業の経営活動に必要不可欠なものであると考えています。ただし、目的を明確に定め、適切に運営しなければ、単なる時間と費用の無駄に終わってしまうのも事実です。

今回の特集は、研修を有意義なものにするためには何が必要なのか、またその中で中小企業診断士に求められる役割は何か、ということをテーマにしています。自社で研修を実施する立場にある経営者・管理者の方や、講師の立場で研修に関わる中小企業診断士にとって、何らかのヒントになると思いますので、是非ご一読頂ければ幸いです。

【2008.04.01】

「企業診断ニュース」4月号の特集記事を執筆しました

中小企業診断協会の会報誌「企業診断ニュース」の4月号特集記事を執筆しました。

特集テーマは「診断士の”仕事力”」で、その中の「プロデュース力を磨こう」という記事です。

独立診断士であっても、企業内診断士であっても、単に依頼された仕事をその範囲内でこなすのではなく、「企業をプロデュースする」という視点を持って取り組むことが重要であるという内容です。
これは、診断士に限らず、ビジネスパーソン全員に当てはまることだと思います。

下記のサイトからダウンロードできますので、ご興味のある方はご一読頂ければ幸いです。

http://www.j-smeca.jp/contents/article/2008_04_article.html

【2008.02.01】

「企業診断」2月号に執筆しました

「企業診断」(同友館)2月号に執筆しました。

「コンサルタントの卵たちへ」という特集の中の「はじめの一歩〜私の独り立ち日記」というコーナーで、中小企業診断士に合格してから独立するまでの体験記です。

記事の最後にも書きましたが、この中で私が最も伝えたかったことは、「独りで立つ」と書くものの、診断士の独立とは、人とのネットワークによる協働であるということです。

これから中小企業診断士になろうとしている方や独立を目指している方に、少しでも参考になれば幸いです。

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