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人事制度構築コンサルティング

「パパ・ママ育休プラス」を本当に推進すべきなのか?2012.01.17

少子化が進む中、持続可能で安心できる社会を作るためには、「就労」と「結婚・出産・子育て」の「二者択一構造」を解消し、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」を実現することが必要不可欠だと言われています。

その一環として、育児・介護休業法が平成21年6月に改正され、一部を除き、平成22年6月30日から施行されました。

改正内容のうち、育児に関係する部分は、次の2点でした。

1 子育て期間中の働き方の見直し

・3歳未満の子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者からの請求があったときの所定外労働免除を制度化する 等
・子の看護休暇制度を拡充する(小学校就学前の子が、1人であれば年5日(現行どおり)、2人以上であれば年10日)。

2 父親も子育てができる働き方の実現

・ 父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2か月(現行1歳) までの間に、1年間育児休業を取得可能とする(パパ・ママ育休プラス)。
・父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得可能とする。
・配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。

しかし、これらの利用はあまり進んでいないのが現状です。たとえば、「平成22年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は0.34%ポイント低下し1.38%となっています。

利用が進まない理由は単純に、「休んだら収入が減って生活できないから」だと思います。
(少なくとも私は1年間も休業したら生活できません。。。)

厚生労働省が「パパ・ママ育休プラス」を実現できると本気で思っているとしたら、現実を認識する力が欠けているとしか思えません。

子供が生まれてお金がかかるのに、夫婦で1年間も休んでどうやって生活できるというのでしょうか?育児休業中は雇用保険から育児休業給付金が給料の40%(当分は50%)支給されますが、それだけではやっていけないと思います。

本気で「パパ・ママ育休プラス」を実現しようと思ったら、厚生労働省は育児休業給付金をせめて80%に上げるくらいでないとダメでしょう。

しかし、財源が不足している現状でそれは不可能ですし、もし可能だとしても、正しい政策とは思えません。

基本的に、働くことと、収入はトレードオフの関係にあります。そのため、収入を得ようと思ったら働くしかないし、働かなかったら収入が減るのは当たり前のことです。

「パパ・ママ育休プラス」は、単純に言えば「収入は減るけど、1年間は夫婦で働くのをやめて育児に専念しましょう」という、非現実的なことを推進しようとしているのです。

私は、女性だけでなく、男性も育児に参加できる環境づくりは非常に大切だと思っています。ただし、その実現のために「収入を減らす」ことが条件になることに違和感を覚えます。

必要なのは、働く人が、子供が生まれる前と変わらない収入を得ながら、育児にも参加できる環境づくりだと思います。

子供が生まれる前と変わらない収入を得るためには、引き続きフルタイムで働かないとダメだと思います。よく「効率をアップさせて、短時間でそれまでと同じ成果を出せるようにしよう」という主張を聞きますが、そんなことができるなら子供が生まれる前からやっているはずです。

「パパ・ママ育休プラス」制度ができた背景には、男性の育児ができないのは労働時間が長いためだという認識があります。
もちろん、早朝から深夜までの勤務がずっと続くような場合は、育児どころではないのは確かですが、例えば労働時間が1日10時間程度であれば、十分育児に参加できると思います。

ただし、そのための環境として、必要なのが、働く「時間帯」と「場所」の自由度を確保することです。つまり、労働者の裁量で、いつでもどこでも働くことができる環境を用意することが必要なのです。

例えば、育児で特に忙しいのは、食事と風呂の時間帯です。その時間帯は、夫婦で協力する必要があると思います。

しかし、その間の時間や、子供が寝た後は、比較的落ち着いた時間が確保できます。そうした時間帯を仕事に充てられれば、トータルでフルタイム働くことはできるはずです。

その場合にネックとなるのが、働く「時間帯」と「場所」です。会社に行かなければ仕事ができない状態だと、子供の食事の時間帯の間や、寝静まった夜中に仕事をするのは困難です。何度も家と会社の間を行ったり来たりするのは、通勤時間だけで相当なロスになってしまいます。

いつでもどこでも働くことができる環境であれば、フルタイムで働くことができ、収入も得ながら、育児にも参加できるわけです。

父親も子育てができる働き方の実現には、単に働く「時間数」を減らすのではなく、「時間帯」と「場所」に裁量を与えることが必要なのです。

厚生労働省の「第63回労働政策審議会労働条件分科会 会議次第及び資料項目」によると、平成16年時点で、ホワイトカラー(専門的・技術的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者、販売従事者)の割合は全体の55.2%を占めています。

インターネットや携帯電話などの普及によって、ホワイトカラーの仕事の多くは、いつでもどこでもできるようになったはずです。ということは、単純に労働者の半分以上は、フルタイムで働くことができ、収入も得ながら、育児にも参加できる可能性を秘めているということです。

あとは、企業側が、そういった環境を用意する気があるかどうかの問題だけです。

働く人にとって、自分の裁量で、いつでもどこでも働くことができるというのは、大きな魅力になるはずです。

したがって、そういう環境をいち早く構築すれば、良い人材がどんどん集まるとともに、社員の定着率や帰属意識も高まるのではないかと思います。

今年の経営テーマとして、「いつでもどこでも働くことができる環境づくり」に取り組んでみてはいかがでしょうか?

社会保険労務士事務所トリプルウィン

代表 樋野 昌法


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